「衛生管理者」や衛生管理者になれる「労働衛生コンサルタント」は、「労働安全衛生法」にもとづく国家資格です。
これらの資格を取得するための試験は、毎年行われています。
医師が労働衛生コンサルタント試験に保健衛生区分で合格することで、「産業医」にもなれます。
ちなみに労働衛生コンサルタント試験を医師が受験する場合には、労働衛生関係法令のみの筆記試験と口述試験になります。
衛生管理者試験の過去問とその解説は、新潟県労働衛生医学協会のホームページなどからダウンロードできます。
また、労働衛生コンサルタント試験の過去問は、労働衛生技術試験協会のホームページ上で公表試験問題が過去2年分ダウンロードできますが、解説はありません。
これらの衛生管理者や労働衛生コンサルタントの過去問の第1問目には、安全衛生管理体制が問われます。
しかし、安全衛生管理体制について、わかりやすくまとまった記事は、ほとんどありません。
そこで、ここでは安全衛生管理体制の中でも重要な統括安全衛生管理者と衛生管理者と産業医について解説します。
安全衛生管理体制とは
労働安全衛生法では、労働災害を防ぎ、事業者の自主的な安全衛生活動を確保するため、安全衛生管理体制を整備することが義務づけられています。
https://www.mhlw.go.jp › bunya › anzeneisei14
50人以上の労働者のいる事業場(同じ場所で事業が行われている組織)では、安全管理体制の構成員として、事業者(法人や事業経営者)、安全管理者、衛生管理者、産業医を選任する必要があり、事業場の規模によっては統括安全衛生管理者が選任されます。
統括安全衛生管理者
統括安全衛生管理者の職務
統括安全衛生管理者は、安全管理者や衛生管理者を指揮するとともに労働者の安全と衛生に関する以下の業務を統括管理する。
労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
労働災害の原因の調査および再発防止対策に関すること
安全衛生に関する方針の表明に関すること
(労働安全衛生法第28条の2第1項の)危険性または有害性等の調査およびその結果に基づき講ずる措置に関すること
安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09912.html
統括安全衛生管理者の選任
- 事業の実施を統括管理する者の中から選任される
- 14日以内に選任し、労働基準監督署に書類を提出する
業種 | 規模 |
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 | 100人 以上 |
製造業、電気・ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、 各種商品小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業および機械修理業 | 300人 以上 |
その他の業種 | 1,000人 以上 |
建設業と造船業では、統括安全衛生責任者を選任する必要があります。
衛生管理者
衛生管理者の職務
労働衛生管理者は、
1) 労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること
2) 労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること
3) 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
4) 労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること
等のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。
また、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、ただちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/5.html
衛生管理者の選任
衛生管理者の選任には以下のように事業場の規模によって最低選任数が決まっています。
事業場の規模 | 最低選任数 |
50~200人 | 1人 |
201~500人 | 2人 |
501~1,000人 | 3人 |
1,001~2,000人 | 4人 |
2,001~3,000人 | 5人 |
3,001人~ | 6人 |
(ほかの事業所に勤務していない)専属の衛生管理者を選出する必要があります。
ただし、2人以上の衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち一人については専属である必要がありません(ほかの事業所に勤務していても可)
以下の事業場では、衛生管理者のうち、少なくとも一人は専任(その仕事だけを担当)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/5.html
・常時1,000人を超える労働者を従事させる事業場
・常時500人を超える労働者を従事させ、かつ法定の有害業務に常時30人以上の労働者を従事させている事業場(有害業務事業場)
法定の有害業務のうち一定の業務を行う有害業務事業場では、衛生管理者のうち一人を衛生工学衛生管理者免許を持っている人から選任
業種に応じた資格
業種 | 資格 |
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業、 電気・ガス・水道業、熱供給業、運送業、 自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業 | 第一種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、 医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、 厚生労働大臣の定める者 |
その他の業種 | 上記または第二種衛生管理者免許 |
産業医
産業医の職務
産業医の職務は、以下の通りです。
- 健康診断、面接指導等の実施およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置
- 作業環境の維持管理
- 作業の管理等労働者の健康管理
- 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置
- 労働衛生教育
- 労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置
産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103897.pdf
また、産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じる必要があります。
産業医の選任
事業者は、以下のように事業場の規模(労働者数)に応じて産業医を選任して、労働者の健康管理等を行わせる必要があります。
- 50人以上 3,000 人以下:1名以上選任
- 3,001 人以上:2名以上選任
また、常時1,000 人以上(法定の有害業務では常時500人以上)の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属の産業医を選任する必要があります。
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